2018年3月に開館した中之島香雪美術館では、開館記念として1年間、所蔵作品を5期に分けて展示し、村山龍平コレクションを紹介いたしました。2019年度以降は、村山コレクションの内容に沿った日本・東洋の美術からテーマを絞って展覧会を開催します。
2019年秋は特別展として、香雪美術館が所蔵する「レパント戦闘図・世界地図屏風」(重要文化財)を軸に、西洋製銅版画に典拠を求められる初期洋風画から輸出漆器までを展示し、近世の海外文化交流の軌跡を美術の世界からたどります。
香雪美術館が所蔵する重要文化財「レパント戦闘図・世界地図屏風」は、西洋絵画の技法を学んだ日本人が描いた初期洋風画の名品です。ヨーロッパ人による大航海時代の波が生んだ日本と西洋の衝撃的な出会いの結晶といえるでしょう。
仏教美術や茶道具を中心とする香雪美術館の所蔵品のなかで、異色の存在ともいえる「レパント戦闘図・世界地図屏風」は初期洋風画のなかでもとりわけ多彩な西洋製銅版画の情報をもとに構成されています。
西洋製銅版画と密接な関係を示す「レパント戦闘図・世界地図屏風」の紹介をひとつのテーマとする本展では、展覧会全体として、作品の典拠となった洋書や銅版画を丁寧に考証し、比較展示することを試みました。初期洋風画はもちろんですが、江戸時代中期以降にオランダとの交流のなかで蘭学の興隆とともに新たな展開を見せ、司馬江漢(1747-1818)、石川大浪(1762-1817)、若杉五十八(1759-1805)など、蘭書挿絵に典拠を求めながらもそれぞれの個性のもと制作された江戸時代の洋風画や、西洋製銅版画の図様を蒔絵や螺鈿で表した輸出漆器など多彩な作品を、洋書や銅版画とともに展示し、近世の日欧文化交流の軌跡を美術の世界からたどります。伝統的な日本の美術とは一味違う異国趣味溢れる作品群を楽しんでいただければ幸いです。