荘厳な滝を前にして覚える畏敬の念と、空高く舞い上がる色鮮やかな凧を眺める時のワクワクする喜び。一見して何の繋がりもないと思われる二つには、肉体と精神の境界線を飛び越える瞬間の体験が、確かに共通しています。
常に変わり続ける水の「かたち」は、日本人にとって諸行無常を素直に理解させる身近な存在であり、滝を訪れることは、一時の涼を得て絶景に目を細めつつ、土地神との霊的な交わりを持つ絶好の機会でした。元々は神意を占う手段であった凧揚げも、やがて世俗的な遊びとして生活に溶け込んでいきます。
この展覧会では、滝を描く19〜20世紀の版画・絵画・漆工品と、素朴で懐かしい凧の数々を並べることで、日本の精神文化を特徴付ける、生物と無生物の両世界を変幻しつつ隔たりなく行き来する神への信仰を浮き彫りにします。