桃山時代に樂茶碗を造り出した初代長次郎以来、轆轤(ろくろ)を用いず手捏ねで成形し、箆で削り上げて形を造り、屋内の小規模な窯で焼き上げられてきた樂焼の技法は、他に類のない独特なものです。初代長次郎より450年、一子相伝で伝わってきた樂焼は、各代が長次郎を意識しながらも、自らの表現を追求し、伝統と創造を極めてきました。
特に15代樂吉左衞門は、赤樂、黒樂茶碗といった伝統的な技法のほかに、特殊な焼貫技法を駆使し、これまでにない斬新かつモダンな造形の茶碗や茶入を制作するなど、独自の世界を築いてきました。
近年、萩に赴き萩焼を焼いたのを機に、轆轤の魅力にとりつかれ、丹波の土や薬師寺東塔基壇の土で茶碗を制作しました。轆轤の回転する遠心力にそって内から外へ広がる開放的な井戸形の造形が特色の轆轤の茶碗は、外から内に向かって抱え込むように形を結んでいる樂茶碗の手捏ね制作とは対照的といえます。
本展では、手捏ねの技と轆轤の技、相反する技によって制作された15代樂吉左衞門の茶碗の数々を展観します。