産業デザイン分野で広く知られる荒木實(1928〜2010)は、東洋の伝統に根ざした絵画作品を数多く残しています。日本人の両親のもとに中国大陸で生まれた荒木は、ニューヨークと台北を活動の場とし、確かな伝統を想起させつつも大胆に洋の東西を結ぶ、大画面の水墨画を創造しました。
本展は、風景・龍・ニホンザル・蓮池をテーマに据えた、それぞれ70フィート以上という長大かつモニュメンタルな5つの作品を中心に構成されています。荒木の画家としての最盛期に制作されたこれらの作品を補完するものとして、明末清初の奇矯な画家八大山人(伝1626〜1705)、リトアニア系アメリカ人画家ベン・シャーン(1898〜1969)、荒木の師であり高名な伝統的中国画家の張大千(1899〜1983)、更に中世日本の禅画という一見全く異質な画家たちに影響を受けた初期・晩期の作品も併せて紹介します。