2020年3月21日、86年の長きにわたり市民の皆様に愛されてきた京都市美術館が、京都市京セラ美術館としてリニューアルオープンします。美術館の再生を記念し、新たにオープンする新館「東山キューブ」では、開館記念展として、国際的に活躍する現代美術作家で京都とも縁の深い杉本博司の個展「杉本博司 瑠璃の浄土」を開催します。
杉本博司は、1970年代より、大型カメラを用いた高度な技術と独自のコンセプトによる写真作品を制作し、世界的に高い評価を受けてきました。また、古今東西の古美術や歴史資料等の蒐集や建築、舞台演出といった幅広い活動を行い、時間の概念や人間の知覚、意識の起源に関する問いを探求し続けています。
これまで幾度となく京都を訪れ、その長い歴史から思索を誘発されてきた杉本は、当地で撮影を行い、作品も生み出してきました。今回、かつて6つの大寺院が存在していた京都・岡崎の地に立つ京都市京セラ美術館の再生にあたり、現代における人々の魂が向かう場所としての浄土の観想や、今、果たされるべき再生とは、といった問いから、「瑠璃の浄土」のタイトルのもと、仮想の寺院の荘厳を構想します。
杉本の京都での美術館における初の本格的な企画となる本展では、新たに制作された京都蓮華王院本堂(通称、三十三間堂)中尊の大判写真を含む「仏の海」や、世界初公開となる大判カラー作品「OPTICKS」シリーズといった写真作品の大規模な展示を試みます。
また、「京都」「浄土」「瑠璃ー硝子」にまつわる様々な作品や考古遺物に加え、屋外の日本庭園には《硝子の茶室 聞鳥庵》も設置され、写真を起点に宗教的、科学的、芸術的探求心が交差しつつ発展する杉本の創造活動の現在について改めて考えるとともに、長きにわたり浄土を希求してきた日本人の心の在り様を見つめ直します。