およそ1910~60年頃にかけてのことですが、日本の知識人、美術愛好家、美術作家たちがアジアの古典美術に憧れた時期がありました。唐物趣味は日本の伝統だとはいえ、このときのアジア熱は別格でした。
朝鮮半島や中国から、考古遺物や古美術が日本に輸入されると、それらは実業家たちによって競うように蒐集されました。平壌では漢代の楽浪漆器が発掘され、河北省では磁州窯や定窯が調査されます。そして息を呑むような伝世品(殷の青銅器、唐三彩・宋磁・元の染付・明の赤絵、煎茶で愛好された籐籠、李朝白磁など)が輸入されました。それらを目の当たりにした画家や工芸家たちは、創造の翼をアジアへと羽ばたかせます。
さらに画家たちは、大同で雲岡石仏を見て、飛鳥仏との繋がりに想いを馳せました。流行のチャイナドレスにも目を留め、アジアの新しい息吹も掬いとりました。
アジアへの憧れは、1960年頃に表舞台からフェードアウトしますが、その後どのように深化されているのでしょうか。新館ギャラリーでは、3人の現代作家に表現していただきました。