<日本美術の世界へ没入する旅!>
ファン・ゴッホの《星月夜》の間に上映される、日本美術に注目したショートプログラム《夢見た日本―浮世絵のイメージ世界》は、ゲイシャに侍、精霊たちの棲む国という共同イメージの創り出す幻想の日本への旅へと誘います。この作品は、19世紀後半、日本と西洋との貿易が開かれた頃からヨーロッパに流通し始めた日本の版画に想を得ています。
日本美術の発見は、印象派の画家たちや前衛芸術家たちのみならず、工芸や装飾美術、音楽、舞踊に至るまで、西洋美術の世界に甚大な影響を与えました。中でもファン・ゴッホは、ジャポニズムへの手放しの傾倒ぶりで知られます。彼はパリの美術商ジークフリート(サミュエル)・ビングの元で日本の版画を学び、自らも多くをコレクションしました。日出ずる国の文化は、彼の作品の描線、色彩、構図に影響を与えました。プロヴァンスで、彼は弟のテオに「南仏の陽光の下では、全てのものが日本になる」と語っています。
そんなファン・ゴッホの日本への耽溺に焦点を当てたダニー・ローズ・スタジオによるこの作品は、日本の浮世絵版画の巨匠の世界への瞑想的かつ聴覚的体験の旅です。
クロード・ドビュッシーの音楽に合わせて桜の花のつかの間の美は移ろい、日本民話に登場する精霊である妖怪たちが棲まう幻想的で不思議な森が現れ、続いて北斎の描く《富嶽三十六景》に登場する大浪が、アトリエ・デ・ルミエールを呑み込みます。
優美で色彩豊かなモチーフに彩られた着物を纏う魅力的な芸者たちが障子の陰から顔を覗かせ、これら全ての精妙な美を堪能した後、来館者は今度は侍の戦いの踊りに酔いしれ、やがて無数の灯籠の浮かぶ夜空の中へと舞い降り、遂には風に吹き攫われるのです。
ダニー・ローズ・スタジオは、17世紀日本に生まれ、19世紀まで途切れることなく続いた浮世絵と呼ばれる芸術作品群と、それらの作者たち(誰もが知る北斎から、国芳や歌麿、国貞といった知る人ぞ知る作者まで)の持つ素晴らしい多様性、豊かさ、近代性を垣間見せてくれます。来館者のために、これらの作品が呼び起こす日本のイメージに生命を与えようと、同スタジオは少なからぬ労力と創造力をこのプログラムにつぎ込みました。
北斎の大浪に触発された、坂本龍一からクロード・ドビュッシーの《海》に至る音楽の選択と、信じられないほど速いリズムを刻む日本の太鼓演奏には、特に注意が払われました。
<クリエイティブ・スタジオ・ダニー・ローズとは>
ダニー・ローズは、建築物への投影、双方向的インスタレーション、博物館資料記録技術、劇場、音楽、オペラ、公共スペースでのアニメーションなど様々な分野で、没入的な視聴覚作品を制作・創造する映像制作スタジオであり、他分野にわたる総合的アーティスト集団です。