「シュルレアリスム」は、20世紀の芸術に最も大きな影響をおよぼした芸術運動のひとつで、フランスの詩人アンドレ・ブルトンが中心となって推し進めたものです。彼らは理性を中心とする近代的な考え方を批判し、理性の支配の及ばない無意識の世界に「超現実」という新たなリアリティを追い求めました。
やがてシュルレアリスムは詩や思想だけではなく絵画の分野にも拡大します。ドイツ出身の画家マックス・エルンストは、コラージュやフロッタージュなど実験的な手法を用い、思いがけないイメージを生じさせる作品を生み出していきました。またスペインからこの運動に加わったサルバドール・ダリは「偏執狂的=批判的」方法という独自の理論にもとづいて絵画を制作し、美術だけではなくファッション界をも巻き込む大きな流行を作り出していきます。
こうした動向は同時代の日本にも伝えられ、1930年代を通して「超現実主義」という訳語のもと、最新の前衛美術のスタイルとして一大旋風を巻き起こします。しかし、日本では「無意識の探求」という本来の目的を離れ、現実離れした奇抜で幻想的な芸術として受け入れられます。そして、しだいに東洋的な思想と混ざり合いながら独自の絵画表現や「シュール」という感覚が生まれるに至ります。
本展は、西洋におけるシュルレアリスムの運動からどのようにシュルレアリスム絵画が生まれたのか、さらに超現実主義から、いわゆる「シュール」と呼ばれる独自の表現への展開に焦点をあてる試みです。