将軍、この立場の人物を思い浮かべるとき、英雄で豪傑な姿を連想する日本人は少なくないのではないでしょうか。約260年間にわたって天下泰平の世をもたらした徳川家の歴代将軍は、自身が文化人であるとともに、文化創造の貢献者としての側面も持ち合わせていました。初代徳川家康以下15人の将軍は、自ら書画を嗜みました。そして、将軍が絵師などの芸術家を抱えたことで、人材が育ち、江戸時代を通して新たな文化がいくつも花開く基盤をつくりました。文化に対する歴代将軍の影響力は、芸術分野のみならず、学問分野などにも及びました。では、文化人としての徳川将軍、さらには文化に対する将軍の貢献とはいかなるものだったのでしょうか。
本展覧会では、德川宗家に伝来する歴代将軍の書画をはじめ、幕府御用絵師狩野派が描いた絵画作品、十一代徳川家斉に献上されたと推察される古代裂帳などを中心に、東京都江戸東京博物館所蔵品を加え、さまざまな作品を展示します。将軍自筆の書画や時代をあらわす作品を通して、江戸文化における将軍の果たした役割を感じていただきたいです。