熊本に生まれた高野松山(たかのしょうざん・1889~1976)は、幼少時より細工物を好んで熊本の工業徒弟学校で漆芸を学び、ついで京都市立美術工芸学校・東京美術学校に学びました。東京美術学校では、帝室技芸員の白山松哉(しらやましょうさい・1853~1923)から厳しい指導を受け、蒔絵(まきえ)の技術を習得します。のちに細川護立(ほそかわもりたつ・1883~1970)の援助を得、目白台の細川邸内に住み込んで「昼は殿様のボディーガード、夜間に制作」という生活を送ります。その後、帝展などへの出品をかさね、1955年には重要無形文化財「蒔絵」保持者に認定されました。
本展は、永青文庫所蔵の高野松山作品全12点を中心に、第1章「近世の漆芸」、第2章「高野松山と近代の工芸」、第3章「近代の絵画」で構成します。
晩年になっても熊本弁をつかい、豪放磊落な人柄だったという高野松山。しかし多彩な蒔絵の技術をもち、その作品1点1点には究極の技が込められています。生誕130年の年に、高野松山の緻密な作品を今一度味わっていただければ幸いです。