2019年の日本・ポーランド国交樹立200周年を記念して企画された本展では、日本に在するコレクションから厳選された第一級の浮世絵版画の名作が、ポーランドの地で史上初めて公開されます。展示される作品の芸術性の高さと質は言うに及ばず、その点からも、非常にシンボリックかつ傑出した展覧会だと言えましょう。あの19世紀後半のように、再び日本から浮世絵がヨーロッパにやってきます……今度は、クラカウの「日本美術館」で公開されるという形で。
マンガ博物館で現在公開されているのは、歌麿・写楽・北斎・広重・国芳という、五人のいずれ劣らぬ浮世絵界の巨人たちによる錦絵です。コレクターの中右瑛（なかう・えい）氏
本人によって選び抜かれた80点の作品は、その本質と豊かな情緒、そして何よりも視覚的な具現化の持つ力で、観覧者を浮世絵世界の真っ只中に引き込みます。世に名高い歌麿の美人画や、グロテスクなまでのアクの強さで表現された写楽の役者絵、北斎や広重による神秘的な風景画や風俗画のシリーズ、お伽話から飛び出してきたような勇壮な国芳の武者絵……見ていると、21世紀に生きている自分を忘れてしまいます。これらは視覚言語に革命をもたらして西洋美術の再構築を成し遂げた偉大なる5人の浮世絵師の全作品を象徴する作品群であり、殆どがポーランドでは初めて公開されるものばかりな上に、無二の初版や稀少な摺りのものも含まれています。
自然でありながら詩情豊かなこれらの版画は、ユニークで心を揺さぶる日本のイメージを醸成する、時代を映す鏡です。自然や日常生活の捉えどころのない現象に対する比類ない洞察力が生み出したこれらの力強い作品群は、その描かれた世界の中へ、観る者を他者としてではなく、参加者として迎え入れてくれるのです。