浮世絵という魅力的な木版画の世界に与えられた今日的意義は、石川真澄(UKIYO-E PROJECT)、大石恵美(BALCOLONY)*、グラフィックデザイナーのアンドリュー・アーチャーの作品の中に、実に見事に表現されています。彼らの作品は全て日本の伝統的木版画に特有の視覚的要素と技術を用いていますが、作品の主題は主に音楽やスポーツといった現代的なものです。「浮世絵NOW―伝統と実験」展は、伝統的な多色摺木版画への現代的なアプローチを紹介し、浮世絵のさらなる発展のために、伝統的な手作業とデジタルプリントという2つの全く違う製作工程がどのように影響しているのかという疑問を提起します。*原文では石川真澄、大石恵美(UKIYO-E PROJECT) となっていましたが訂正します。―訳者
本展はポップカルチャーとスポーツから採られたモチーフを浮世絵の美学に変換する石川真澄(1978年東京・生)、大石恵美、グラフィックデザイナーのアンドリュー・アーチャー(オークランド・生)の作品をヨーロッパに紹介する初めての展覧会です。彼らは江戸時代(1683〜1868)のイディオムと視覚イメージの更新を支える、日本美術のグローバル化の草分け的存在と言えるアーティストです。
浮世絵に見られる主題と様式、技術は20世紀までは明らかに日本的なものでしたが、それから100年を経て、浮世絵から発展した芸術言語は世界中のアーティストに用いられるものになりました。石川、大石、アーチャーはそれぞれ日本の多色摺木版画から典型的な視覚的要素と技術を借用しつつ、今日の世界的エンターテイメントである音楽とスポーツを主題としています。
浮世絵の再生を目し、伝統的な制作技術を用いて新しい主題を解釈するUkiyo-e Project(浮世絵プロジェクト)は2014年に創設されました。MAKの「浮世絵NOW」展では、その精巧にデザインされた版画作品の全貌が、日本国外で初めて公開されます。
Ukiyo-e Project(浮世絵プロジェクト)が採用する伝統的な製作工程とは対照的に、アンドリュー・アーチャーの作品はデジタルで製作されています。メルボルン在のグラフィックデザイナーであるアーチャーは、バスケットボールと浮世絵に対する情熱を、2013年以来出版が続けられる彼の最長のシリーズ《EDO-BALL》に共に注ぎ込み結実させました。高画質のデジタルプリントによるダイナミックなシリーズ作品は、歌川国芳と弟子の月岡芳年の様式を継承し、ウィットとユーモアで見るものを虜にします。