梅田哲也は、その場所にあるものや廃材、日用品で構成される光・音・動きを伴うインスタレーションや、そこにいる人たちとともに作り上げるパフォーマンスを国内外で発表し、国際的に高く評価されているアーティストです。音楽・美術・舞台芸術という分野を横断する活動の根底には、それらが地続きであることへの意識と、物理現象とアートと生活の接続可能性についてのたゆまぬ考察と実践があります。
2019年3月21日にリニューアルオープンをした福岡市美術館は、11月3日に開館40周年を迎えます。この記念すべきときに、梅田哲也の個展を開催することは、当館にとって新たな挑戦といえます。建築や設備、さらには組織に介入し、既成のルールとのせめぎあいのなかで作品を成立させる梅田の方法は、美術館における固定概念を揺るがし、「美術」の再考を促すに違いありません。
本展覧会では、新旧の要素をあわせもつ当館の複数の場所に、梅田のインスタレーションが展開します。梅田の作品は鑑賞者に、注視し、傾聴し、感じ、考え、想像することを求めます。ここにあるもの、ここで生まれようとしているものは何か、それらはどのような関係にあるのか。ここにないもの、ここから失われようとしているものは何か、それはなぜなのか。梅田の作品によって導かれる思考と想像は、現在の生活はもとより、美術(館)の歴史や将来にも、想像の及ばないような遠い未来と起源にも、つながっていくことでしょう。