草間弥生:蛍の群れの舞う中で存在を跡形もなく消していく

December 20, 2019 to December 31, 2020

草間弥生の《蛍の群れの舞う中で存在を跡形もなく消していく》は、彼女の作品の中でもより幻想的なものの一つです。1万匹の蛍が舞う野中を歩くという日本の民話に想を得た草間の作品は、民話の世界を現実に創り出します。描くことから始まった草間弥生の創作は、二次元の平面世界から、彼女の着想が持つ取り憑かれたような、かつ量感に溢れた性質を象徴する大規模なインスタレーションへと移行しました。以降の草間の作品は大型化し、しばしば部屋やスペースの全体を覆い尽くすまでになります。

この作品は、平面を全て鏡で覆い尽くした暗い部屋の中に、天井からLED照明の束を吊り下げたものです。この一見小さな部屋が、鑑賞者にとってはまるで茫漠たる無限無辺の光の宇宙のように感じられ、招き入れられれば草間の蛍に取り巻かれ、やがて自己の存在を跡形もなく消してしまえるのです。

草間弥生の《無限の鏡の部屋》は、「自我」の持つサイケデリックな感覚と、彼女の少女期に始まり今もなお続く幻覚とを探求する作品です。草間は水玉模様と鏡とLED照明を何度も繰り返し広範囲に使用することで、果てのない繰り返しを探査し、鑑賞者の自我を「跡形もなく霧消させ」、永遠と一体化するよう促しているのです。

知覚体験の先駆者として、草間は彼女の心理的な強迫観念と、それらを美的に制御することとの間の複雑な均衡を表現しています。1950年代後半に草間は日本を発ち、ニューヨークへと向かいました。彼女の手掛ける作品は、絵画・パフォーマンス・インスタレーション・彫刻・映画・ファッション・著述と多岐に亘ります。それらは20世紀のポップアートとミニマリスム運動を超越し、心のあり方を変容させるヒッピー文化の精神性を反映しているのです。

※美術館は会員の方には10月1日、一般の方には10月14日から会館します。

ジャンル

タグ

開催場所

フェニックス美術館

アリゾナ州フェニックス市
アメリカ合衆国
Phoenix Art Museum
1625 N. Central Avenue
Phoenix, AZ 85004-1685
Phone: +1-602-257-1880